「朗読劇」は「朗読」ではない。

朗読劇というと、なんとなく市原悦子さんか奈良岡朋子さんが椅子に

座って本を読んでいるイメージが浮かんでくる。

でも、それはあくまで「朗読」であって、「朗読劇」とはちがう。

「朗読」は感情をこめて語るもので、「朗読劇」は役者が台本を持ったまま

演じていることを除けば、ふつうの芝居と変わらない。

もちろん、座って演じる場面もあるし、歩き回ることもあるし、走って転ぶ

こともあるし、朗読劇だからといってこうしなくちゃいけないということは

ないのだ。

 

朗読劇には制約が多そうだが・・・

 

実は、役者が台本を持っているというその制約を逆利用して、ふつうの芝居

ではできないような演出も考えられる。

たとえば、朗読劇でシャワーシーンがあったとしたらどうだろう?

しかもシャワーを浴びながら独白するシーンだとしたら?

ここで役者が舞台袖に入ってセリフにシャワーの音をかぶせるだけでは、

せっかくの朗読劇の特徴が台無しになってしまう。

こういう場合、役者はびしょ濡れの台本を持ってシャワールームから

出てこなければならない。

それで、なんてこともないシャワーシーンが突然、印象的に変化するのだ。

 

さらに、シャワーシーン以外の例。

 

たとえば、朗読劇で役者が寝るシーンはどうだろう?

役者がベッドに入って明かりを消し、暗闇のなかで独白や回想シーンが

あったとしたら?

もちろん、朗読劇なので台本を読まなければならないが、部屋が暗くて

字なんてちっとも見えやしない。

このとき、役者が薄暗いなかで必死に台本を読もうとする演技をすれば、

それだけでおかしいシーンになるはずだ。

 

最後の手段、偽装朗読劇。

 

つまり、役者が朗読劇を装って白紙の台本を読んでいる場合。

歌舞伎の「勧進帳」で弁慶が実際には書かれていない文章を読むパターンで、

「おおかみ男のフローチャート」も一瞬そうしようかと思ったが、役者が

かわいそうすぎるのでやめた。

そのかわり、「おおかみ男のフローチャート」には都合よく、おおかみ男が

シャワーを浴びるシーンも、ベッドに入ってぶつぶつ言うシーンもあるので、

そっちの方は本当にやるつもりではある。

 

 

「おおかみ男のフローチャート」を

全部おぼえさせたら弁慶も泣くだろう。

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