9月の旗上げ公演「おおかみ男のフローチャート」のなかで、
かつて早稲田小劇場で上演された「劇的なるものをめぐってⅡ」を
イメージした場面が出てくる。
白石加代子主演の「劇的なるものをめぐってⅡ」は、いわゆる通常の
戯曲がない芝居なのだ。
それは座敷牢に閉じ込められた芝居好きの狂女が幻覚と現実の間を
さまよいながら、ベケットや鶴屋南北の戯曲や泉鏡花の小説の名セリフ
を次々に語り出すというもので、僕にとって、当時リアルタイムで
見ることができなかったのを最も残念に思った芝居でもある。
その無念さが「おおかみ男のフローチャート」のなかに思わず
にじみ出てしまったということかもしれない。
引っ越し先の寝台特急が終点に着いてから一度清掃のため車庫に
入るため、おおかみ男は降りるしかなく、次の発車までの9時間を
ホームレスとして過ごすことになる。
おおかみ男はひまつぶしの一環として、喫茶店で粘ろうとするのだが、
そこにいたちょっと歳のいったウェイトレスを狂女に見立てて、
脳内で勝手に「劇的なるものをめぐってⅡ」を再現させようとする
なかなか傍若無人な場面がそれだ。
最初130枚あった台本を80枚にまで減らしたのにこの場面が
残ったのは、この狂女がちょっとした伏線になっているから。
いったいどのような形で伏線になっているのかは、是非とも本番で
確認してみてほしいと思う。
そして、稽古で最も難航しそうなのは、この狂女に関連する部分だと
思われるので、今から頭が痛くなってもいる・・・