手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)

10年以上前から読みたかった本をやっと読めた。

穂村弘氏の歌集「手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)」だ。

絶対にいいだろうなと思ってたけど、これはいつか脱兎で舞台化したいと

思うくらい、ほんとによかった。

だいたい、歌人「ほむほむ」に大量の手紙を送りつづける少女「まみ」(源氏名あり)

が、妹「ゆゆ」と黒ウサギ「にんに」を連れて上京してきて歌人に憑依してできた

歌集ってどんな歌集なんだ。

3人称の短歌なんて、他人の目で歌を詠んでいいなんて、そんなの好きに

決まってるじゃないですか。

 

目覚めたら息まっしろで、これはもう、ほんかくてきよ、ほんかくてき

 

恋人の恋人の恋人の恋人の恋人の恋人の死

 

いきなりこれだもんな。

短歌ですぜ、これ。

 

本当にウサギがついたお餅なら毛だらけのはず、おもいませんか?

 

巻き上げよ、この素晴らしきスパゲティ(キャバクラ嬢の休日風)を

 

夜明け前 誰も守らぬ信号が海の手前で瞬いている

 

ローズヒップを「ばらのおしり」とおもってた 兎が齧ってしまったおしり

 

まみの髪、金髪なのは、みとめます。ウサギ抱いてるのは、みとめます

 

もうずいぶんながいあいだ生きてるの、ばかにしないでくれます。ぷん

 

ラケットで蝶を打ったの、手応えがぜんぜんなくて、めまいがしたわ

 

ああ、また長女か、いやだなあ。夢の中までも長女はいやでござんす

 

このシャツを着ているときはなぜだろういつでも向かい風の気がする

 

なんだよおぜんぜんなんも食えるとこねえじゃねえかと蟹を怒る

 

いかんいかん、ちょっとぱらぱらめくっただけで気になる歌が

ありすぎるので、いい加減にしときます。

「まみ」のつぶやきも今ならツイッターで拡散されまくるんだろうな。

ツイッターの中を半永久的に引越ししつづける手紙魔「まみ」は、

すぐ都市伝説になれる。

でも、短歌には短歌で返さないといけない。

そのうち短歌が現代人のたしなみになると、ちょっと面白いかも。

言葉の愉快犯が赤い下駄を鳴らしてやってくるだけの芝居をいつか

書いてみようか。

短歌しか言わないやつ。

 

手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ) (小学館文庫)
穂村 弘
小学館 (2014-02-06)
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