昨日、こまばアゴラ劇場で日本のラジオの公演「ツヤマジケン」を
観てきた。
合宿に訪れた演劇部員たちが「都井」という行方不明になった部員を
めぐって右往左往し、それが昭和13年に実際に起きた「津山事件」と、
微妙に重なりながら最後の惨劇を予感させるスリリングな舞台だった。
この作品を見ながら、自分が演出する側としてどういう演技を求めるのかを
再認識した。
演技の基本は「他人のフリ」をするという嘘。
「嘘」は、自然な立居振る舞いができなければ、すぐにバレる。
少しでも不自然な挙動が感じられれば、すべてが壊れるのだ。
その意味で、自分は今回の役者陣に完全にだまされてしまった。
舞台上の全員がまったく自然極まりない表現をしている。
その、ほとんど演技を感じさせない演技のせいで、役というより
ほんとにそういう人に見えたのだ。
この演技を見て、やっぱり演劇は役者を見せるためにあるんだなあ、
という当たり前のことを再認識したし、自分も役者にこういう演技を
求めるだろうと思った。
役者のいない映画はありうるけど、役者のいない演劇はありえない。
それが演劇の特徴であり、強みなのだろう。
また、演出ということで言うと、「嘘」のほんとらしさ、現実らしさを
全体的にコントロールして統一するのが演出家の仕事なのかなと思った。
現実のフリをしたもうひとつの現実を生身で表現するのが演劇だと、誰か
言っていたかもしれないがほんとにそうなのだ。
「やさしくしてくれればやさしくできた」
女子校生10人をしっかり描き分けると同時に、いろんな「おかしさ」が
仕組まれていて、シリアスなのについ笑ってしまう脚本のバランスもよかった。
そして、悪夢の亡霊みたいにずっと部屋の隅にうずくまっている津山事件の
犯人ムツオの「やさしくしてくれればやさしくできた」というつぶやきが、
最後にずっしり心に残った。
![](https://i0.wp.com/mae-ryo.com/wp-content/uploads/2018/06/2015_agora.jpg?resize=274%2C411&ssl=1)
2階が舞台で1階がロビーと図書室みたいになっている。「東大電気」の正面とは東大もと暗し。
「ムツオさん」という曲のモデルが
津山事件の犯人、都井睦雄。
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