昨日、伊織夏生さん主宰の演劇ユニット、salty rockの公演「森に棲む魚と
ハルニレのウタ」を見に高田馬場プロト・シアターに行ってきた。
自分にとって高田馬場は手塚プロのイメージしかなかったが、あんなところに
劇場があったとは知らなかった。
舞台空間は思ったより広く、席数も予想以上ながら、これで昼・夜とも満席
とはうらやましいかぎりだ。
開演前から演者の一部は舞台に出ていて、幽霊少女たちが薄暗いなかをふわふわ
うろうろ漂っていた。
つまり、こういう芝居なのだ。
チラシには、こう書いてある。
「12歳でこの世を去った彼女の姉。すべてはそこから始まった。
終わりを望む世界と、始まろうとする心。
生きること、死ぬこと、そして、繋いでいくこと。
これはきっと、あなたと誰かの物語。」
子供の死を扱った重めの内容だけに、一度見てすんなり飲み込めるものというより、
あとからいろんなシーンやセリフを思い出しながら少しずつ納得して受け入れていく
タイプの話だと思う。
内容がハードになるほど逆のベクトルを持った存在が重要になるわけだけど、この公演
では守護霊杏奈さんと、あずき菜月さんの鬼がまさにそれであって、この二人の存在が
非常に印象に残ったのであった。
また、登場人物が多いながらもキャスティングに違和感がなく、全員がちゃんと素敵に
見えたのは演出の力というものだろう。
ラスト、生歌バックで木村優希さんの長いセリフがある。
歌のせいでセリフが聞きづらいという人もいるだろうけど、あのセリフ単体だと
お客さんが受けとめきれない恐れがあるので、個人的には歌で中和してくれた
ほうがありがたい。
ところで、これだけ娯楽が多様化・細分化した世の中なのに、まだ演劇にお客さんが
集まる理由って何なんだろうか?
帰り道にそんなことを考えながら、なにかと興味がつきない夜だった。