脱兎,X・Y・Zoo(通称、脱兎)-演劇法人をつけないと、まったく何のことだか
わからない名前ですよね。
組織なのか、店舗なのか、何かのブランド名か、あるいはライブハウスか・・・
もちろん、これは意図的に記号的な名前にしてあるわけですが、今回はその辺について
書いてみたいと思います。
まずは「脱兎」を使いたかった。
最初は、たしか何かの本に「脱兎」という言葉が出てきて、その瞬間にインスピレーションが
湧いたことを今でもおぼえています。
「脱兎のごとく」という言葉のとおり、すばやく、俊敏に動くイメージがこれからの自分に
もっとも必要なものに思えたわけです。
ただ、「演劇法人 脱兎」でもいいと言えばいいのですが、なにか字面のインパクト、
独特さが足りません。
「脱兎」に何をくっつけるか?
実は、わりとあっさり決まりました。
ヒントは「兎」と、旗揚げ公演の演目「おおかみ男のフローチャート」。
何せ「兎」と「おおかみ」ですから、「動物」→「Zoo」というわかりやすい連想。
それにしても、「演劇法人 脱兎,Zoo」というのは言いにくい。
今度は「Zoo」の前に何かつけないといけませんが、「Z」の前は「X」と「Y」に
決まってますよね。
こんなふうに「演劇法人 脱兎,X・Y・Zoo」は誕生しました。
あらゆる可能性を感じさせる名前。
それは演劇をやるにあたって実績もなく非力な自分にとって、どうしても必要なものです。
見た瞬間に「何かやってくれそうだ」という気配を感じてもらえれば、たとえそれが錯覚
であっても、こちらにとっては力になります。
また演劇界の例でいうと、「劇団四季」が「劇団冬」であったり、「宝塚歌劇団」が
「篠塚歌劇団」であったとしたら、現在の状態にはなっていなかっただろうということです。
このように、言葉にはたったひと文字で何かを変えてしまう魔力があり、ネーミングには
特にその傾向が出やすいような気がしますね。
しかし、「篠塚歌劇団」の場末感は、逆にちょっと見てみたい気がしてくるな・・・
これも言葉の魔力です。
記号性で多様なイメージを喚起する。
「脱兎」は動きと変化、「X」は無限、「Y」は何にでもなりうる抽象性、
「Zoo」は異なるものたちの、それぞれに異なる能力。
「脱兎,X・Y・Zoo」という、この呪文のような記号。
まず、自分自身があらゆる可能性を感じられること、そして、自分自身が「何かできそうだ」
と思えるネーミング。
それが、これだったわけです。